
国立科学博物館(かはく)がコレクションの保存体制を充実させるために、クラウドファンディングを利用し、開始わずか9時間で目標金額の1億円を達成したニュースが注目されました。
2023年8月7日に開始した同プロジェクトは、8月23日時点で7億円を突破しており、約2週間で目標金額の7倍もの資金獲得に成功しています。
このように聞くと、「クラウドファンディングで資金を集めたい!」と考える方もいるはずです。しかし、「クラウドファンディングの仕組みがわからない」「やり方がわからない」「返礼品が必要?それとも寄付なの?」など、疑問がある方も多いでしょう。
そこで本記事ではクラウドファンディングの仕組み、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
クラウドファンディングとは?寄付とは違う?
クラウドファンディングとは、簡単にいえば「インターネットを活用して不特定多数の人から資金を調達する方法」です。
その仕組みは、「社会課題・問題を解決したい」「新たなサービスを生み出したい」などの思いを持つ発案者が具体案をクラウドファンディングサイトで発信します。それに賛同した人が支援金を提供することで、発案者が資金を調達できるのです。
また支援金は寄付だけではなく、支援者に返礼品がある支援方法もあります。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングの種類は、支援者へのリターンの違いにより以下のように分類されます。
・寄付型
支援者へのリターンがない方法で、被災地の支援やNPOの活動資金といった社会貢献性の高いプロジェクトに多くみられます。一般的な寄付と変わらないため、イメージしやすいでしょう。
・購入型
支援者が資金を提供する見返りとして、商品・グッズ・サービスを受け取る方法です。例えば、新たな商品開発のプロジェクトで開発商品が届くといった具合です。ちなみに冒頭で紹介した国立科学博物館の事例は「購入型」になります。
・金融型
金融型は出資者に対して、株式や配当金といった金銭的なリターンを行う方法です。ソーシャルレンディングと呼ぶこともあります。
クラウドファンディングの決済方式
クラウドファンディングの仕組みとして特徴的なのは、決済方式が2種類あることです。
・All or Nothing方式
プロジェクトの目標金額を達成した場合のみ、発案者が支援金を受け取れる方式です。反対に目標金額を達成しなければ、支援金が得られないため、プロジェクトを実行する必要もありません。
・All in方式
目標金額を達成しなくても支援金を受け取れる方式です。ただし、目標金額の達成にかかわらず、プロジェクトを実行する必要があります。
このように決済方式により、目標金額で資金が受け取れるかどうか、プロジェクトの実行すべきかどうかに違いがあります。新商品の開発ならAll or Nothing方式、寄付にはAll in方式が向いているといえるでしょう。
クラウドファンディングの3つのメリット

事業者からクラウドファンディングが注目される理由は、以下の3つのメリットがあるためです。
- 資金調達ができる
- ブランディングやファンの獲得につながる
- テストマーケティングとして利用できる
発案者としてクラウドファンディングの利用を検討している方は、得られるメリットについて理解を深めておきましょう。
メリット①:資金調達ができる
クラウドファンディングは、だれでも発案者となり支援金を募集できます。そのため個人や実績のない法人など、これまでの方法では難しい場合でも資金を調達できる可能性があります。
また金融機関での借り入れとは異なり、プロジェクトの実施やリターンの実行で、資金を返済する必要がないのもメリットといえるでしょう。
メリット②:ブランディングやファンの獲得につながる
クラウドファンディングのサイトで支援を呼びかけることで、ブランディングやファンの獲得につながります。
これまでになかった商品・サービスを提案したり、開発に至ったストーリーや思いを発信したりすることで、支援者の共感を得られるためです。またプロジェクトが注目されることにより、露出が高まることもメリットといえます。
メリット③:テストマーケティングとして利用できる
ビジネス上のクラウドファンディングのメリットは、テストマーケティングとして利用できることです。
例えば新商品を開発したい場合、市場に投入する前にクラウドファンディングで支援者を集めることにより、「どの程度の需要があるか」「消費者が求める商品・サービスか」を確認できます。
目標金額を達成できない、期待したほどの反応がない場合は、消費者の需要がない商品かもしれません。
このようにクラウドファンディングを利用することで、テストマーケティングの実施にもなるのがメリットです。
クラウドファンディングの3つのデメリット
クラウドファンディングは金融機関からの借り入れと比較して低リスクなため、手軽に資金調達ができると思うかもしれません。しかしメリットばかりではなく、以下の3つのデメリットもあるので注意してください。
- 資金調達できない可能性がある
- 資金調達までに時間がかかる
- アイデアを盗まれるリスクがある
トラブルを回避するために、デメリットについても押さえておきましょう。
デメリット①:資金調達できない可能性がある
クラウドファンディングのデメリットは、資金を調達できない可能性があることです。
「All or Nothing方式」は、目標金額を達成しなければ資金調達ができません。「All in方式」であっても、目標金額を大きく下回る資金しか調達できない可能性もあります。
そのような事態を避けるためには、プロジェクト内容やリターンについてしっかりと検討する必要があります。また資金調達に成功してもプロジェクトを実行できない場合は、支援者に返金する必要がありますので、注意してください。
デメリット②:資金調達までに時間がかかる
クラウドファンディングのデメリットは、資金調達までに時間がかかることです。サイトで支援金を呼びかけても、すぐに目標金額を達成できないことや、場合によっては数ヵ月かかることもあるためです。
またクラウドファンディングが終了しても、入金までに時間がかかります。急ぎで資金が必要な場合は、他の資金調達方法を検討しましょう。
デメリット③:アイデアを盗まれるリスクがある
発案者のアイデアを閲覧するのは、支援者だけではなく同業者や競合企業の可能性もあります。そのため、他事業者にアイデアを盗まれるリスクがあるので注意が必要です。特許や商標権の取得といった予防策を検討しましょう。
クラウドファンディングのやり方

クラウドファンディングで資金調達にチャレンジしたい方のなかで、「やり方がわからない」という方もいるでしょう。クラウドファンディングのやり方の手順は以下のとおりです。
1. 事業計画の作成
多くの支援者から共感を得られるように、事業計画を作成します。例えば商品の概要や目標金額、実施スケジュールの設定です。事業計画の作成のポイントは、「不特定多数の人に共感してもらえるか」です。
2. クラウドファンディングサイトの選定
次に、どのサイトに掲載するかを選定します。
3. プロジェクトチームの結成
クラウドファンディングの成功には、支援の輪を広げられるかがポイントです。発信力に優れたメンバーや、趣旨に賛同してくれるメンバーでプロジェクトチームを結成しましょう。
4. ページ作成、継続的な情報発信
サイトに掲載するページを作成します。また掲載後も目標を達成できるように、SNSなどで継続的な情報発信が必要です。
5. 掲載終了
掲載が終了すると、手数料を引いた支援金が入金されます。
6. プロジェクトの実施
支援金をもとにプロジェクトを実施します。
クラウドファンディングサイトの比較一覧
クラウドファンディングサイトの比較一覧は、以下のとおりです。
サイト名 | 特徴 | 発案者の手数料 |
READYFOR | 日本初のクラウドファンディングサイト | シンプルプラン:12% フルサポートプラン:17% |
Makuake | 集客力に優れたプラットフォームと、充実したサポート体制が魅力 | 20% |
CAMPFIRE | 豊富なジャンルに対応 | 15% |
GoodMorning | 社会問題の解決に向けたテーマが中心で、手数料の安さが魅力 | 9% |
GREENFUNDING | 実店舗でプロモーションができる | スタンダード:20% パートナー:13% (初期費用130万円) |
クラウドファンディングの掲載サイトを選ぶ際は、手数料や自社プロジェクトとの相性の良さなどを考慮しましょう。
新規事業の資金調達にはクラウドファンディング
資金調達方法の1つとして認知度を高めているクラウドファンディングですが、まだ利用したことがない企業がほとんどでしょう。
うまく活用することで資金調達できるだけでなく、ブランディングやファンの獲得、テストマーケティングができるといったメリットがあります。新規事業の資金調達には、クラウドファンディングの利用を検討してみてください。