「レジリエンスを聞く機会が増えた」と感じているビジネスパーソンは多いでしょう。
現代は頻繁に起こる水害や震災、コロナの流行、ウクライナ侵攻といったさまざまな要因により、将来の予測が困難な時代です。そのため予期せぬ事態が起こる可能性も高く、個人・企業においてレジリエンスの重要性が増しているためです。
本記事ではレジリエンスの意味、高めるメリットや方法についてわかりやすく解説します。
レジリエンスとは?逆境や苦境から回復する力
レジリエンス(resilience)とは、「回復力」や「耐久性」の意味を持つ言葉です。
レジリエンスはもともと物理学の用語で、外部から力を加えた物質や物体がもとに戻ろうとする回復力・復元力をあらわす言葉でした。その後心理学において外部のストレスからの回復力・耐久性がある人を「レジリエンスが高い」と表現します。
その意味から企業においても、逆境や苦境といった困難な状況から回復する力をレジリエンスと呼び、変動の激しい現代において重要視されています。
レジリエンスがビジネスにおいて注目される背景
ビジネスにおいて「レジリエンス」は、頻繁に登場するキーワードです。キーワード検索の回数をグラフでチェックできる「Googleトレンド」によると、レジリエンスの検索回数の推移は以下のとおりです。
出典:Googleトレンド
グラフを見ると2014年4月に急激に伸びており、この時期に何があったかというと、NHKがクローズアップ現代にて「“折れない心”の育て方~「レジリエンス」を知っていますか?~」を放送しています。
番組放送以降、レジリエンスの認知度が次第に高まり、よく使われるビジネス用語に定着したのです。
それではなぜ、レジリエンスがビジネスにおいて注目されているかといえば、昨今の先行きが見通せない世界情勢のためです。
現代はVUCA(ブーカ)時代と呼ばれ、将来を予想することが困難といわれています。例えば頻繁に起こる水害や震災、コロナの流行、ウクライナ侵攻などが要因です。このような変動の激しい時代においても、企業が成長を遂げるためには、困難な状況に陥ってもすぐに回復できる力が必要とされています。
※VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧)」の頭文字をとった造語です。
レジリエンスを高める企業のメリット
企業はレジリエンスを高めることにより、以下のメリットを得られます。
- リスクに対して冷静・柔軟に対応できる
- 社員の心身の健康維持につながる
- イノベーションが生まれやすくなる
これらのメリットにより、企業価値・企業の成長が期待できるのです。
リスクに対して冷静・柔軟に対応できる
レジリエンスを高めるとトラブルや予期せぬ事態が発生しても、リスクに対して冷静・柔軟に対応できます。冷静・柔軟に対応することで適切に対処できるため、乗り切れる可能性も高くなるでしょう。つまり変化に強い組織を構築できるのがメリットです。
社員の心身の健康維持につながる
社員のレジリエンスを高めると、社員のストレスに対する耐久力が上昇するため、心身が健康な状態で働けるのがメリットです。さらに離職率の低下や、人材を確保しやすくなるといった効果も期待できます。
イノベーションが生まれやすくなる
企業のレジリエンスが高まると、個々の社員は目標に向かって主体的な行動をとりやすくなります。またコミュニケーション力の強化も期待できるため、チームや部門が機能しやすくなるでしょう。その結果、企業の目標達成に向けたイノベーションが生まれやすくなるのがメリットです。
企業のレジリエンスを高める方法
メリットからもわかるように、レジリエンスを高めると持続的な成長に大きく役立ちますが、問題はどのようにして高めるかでしょう。この章では企業のレジリエンスを高める方法を3つ紹介します。
- BCP(事業継続計画)を作成する
- 多様な人材を受け入れる
- 個々の社員のレジリエンスを高める
BCP(事業継続計画)を作成する
BCP(事業継続計画)とは、自然災害やテロなどの緊急事態が発生した場合に、企業の損害を最小限にしながら中核事業の継続・早期復旧するための計画のことです。突然発生する緊急事態に備えておくことで、企業のレジリエンスは高くなります。またBCPを作成することで、ステークホルダーの利益につながるため、企業価値向上も期待できます。
多様な人材を受け入れる
企業のレジリエンスを高める手法に、多様な人材を受け入れる方法があります。多様な人材とは、例えば以下のような幅広い属性の人材を指します。
- 障害の有無
- 性別
- 年齢
- 人種
- 国籍
- 性的思考
- 宗教
- 価値観
企業が多様な人材を受け入れることは「ダイバーシティ経営」と呼び、経済産業省も推奨しているほどです。多様な人材を生かすことで、多様化する市場ニーズへの対応や新たなイノベーションが生まれやすくなり、企業の競争力が強化されるためです。
個々の社員のレジリエンスを高める
企業のレジリエンスは、社員のレジリエンスを集結させたものと考えることもできます。そのため企業のレジリエンスを高めるには、社員一人ひとりのレジリエンスを強化するのが有効です。次章では、社員のレジリエンスを高める方法について紹介します。
個人のレジリエンスを高める方法
企業にはレジリエンスが高い方もいれば、低い方もいるでしょう。しかし、レジリエンスは先天性のものではなく、後天的に高めることも十分に可能です。個々のレジリエンスを高めるために、以下の3つの方法をおすすめします。
- 自分をよく知る
- ABCDE理論の実践
- 自己効力感を高める
仕事でのストレスに対する耐久性を高めるためにも、ぜひ実践してみてください。
自分をよく知る
まずは自分の考え方・性格・望む生き方や働き方などを洗い出します。自分で自分のことを理解することで、どの部分にアプローチしてレジリエンスを高めれば良いか具体的に考えられるためです。
ABCDE理論の実践
逆境ではどうしてもマイナスな感情にとらわれてしまい、ネガティブな考え方しか湧いてこないという方もいるでしょう。そのような方はマイナスの感情にレジリエンスを妨げられないために、ABCDE理論の実践がおすすめです。
ABCDE理論とは、アメリカのアルバート・エリス博士が提唱した理論で、以下の5つの要素で構成されています。
要素 | 例 |
---|---|
A(Activating Event):出来事 | 仕事でミスをしてしまった |
B(Belief):考え方 | 自分はミスばかりで会社の役に立たない |
C(Consequence):結果 | 自分はこの会社のお荷物だ |
D(Dispute):反論 | ミスは誰でも起こす |
E(Effect):効果 | 次は同じミスをしないように対策しよう |
実践方法は、まずA(出来事)に対するB(考え方)とC(結果)を考えます。そして、Bの考え方が本当に正しいのか、自らD(反論)を加えるのがポイントです。D(反論)に対する受け止め方がE(効果)で、建設的な結論が出やすくなります。
つまり、Bのネガティブな考え方を違う角度から反論することで、良い見方に変えるのがABCDE理論です。思考パターンを変える方法として、よく利用されています。
自己効力感を高める
自己効力感とは、困難な出来事を前にしても「自分ならできる」「うまくいく」と自分に達成する力があると認識することです。自己効力感が高いと、困難な出来事に対しても挑戦できるので、チャンスを生み出す可能性が高くなります。自己効力感を高めるには、成功体験積み重ねがポイントです。
まとめ
レジリエンスはビジネスにおいても重要なキーワードです。また個人もレジリエンスを高めることでストレスへの耐性が高まり、より働きやすくなるはずです。 本記事では企業・個人のそれぞれでレジリエンスを高める方法について解説しました。将来が予想しにくい時代だからこそ、それらを参考にレジリエンスを高めて継続的な成長を目指しましょう。