みなさんは、「世界遺産」を見たことはありますか?
一般的に世界遺産といわれると、物凄く昔に建てられた古代の神殿や宮殿や、絶景などを思い浮かべる方が多いと思います。
旅行に行ったときなどに訪れた観光地が、世界遺産に登録されているのか、何かに指定されているのか、などという事は気にしない方も多いと思います。
では、日本にはいくつあるのでしょうか?
今回は、日本の世界遺産について、候補地の問題や数、有名な県など含めて解説します!
世界遺産の数
「世界遺産」が世界中にいくつ存在するのか調べてみたところ、1,154件になりました。
そもそも世界遺産と定義づけられているのは、1972年にユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づき「世界遺産リスト」に記載された、「顕著な普遍的価値」をもつ建造物や遺跡、景観、自然のことです。
「世界遺産」は、世界遺産条約に基づいて作成される「世界遺産一覧表」に記載されていて、簡単な分類があります。歴史的に重要とされる「文化遺産」、絶景や豊かな森、海などの「自然遺産」、それらが交じり合う「複合遺産」です。
建造物や遺跡などのは「文化遺産」、自然地域などの「自然遺産」、文化と自然の両方の要素を兼ね備えた「複合遺産」の3種類に分けられます。
件数でいうと、文化遺産897件、自然遺産218件、複合遺産39件が存在するようです。
ここでの疑問、「日本には世界遺産が何個あるの?」
100個?いや30個?もっと少なくて5個?
正解は25個です。正解でしたか?
人によって予想より多かったり、少なかったりしたのではないでしょうか。
日本では25件(文化遺産20件、自然遺産5件)となっています。
これは、世界で何番目に多いかというと11番目です。
意外に少ないと思われるかもしれませんが、1位はイタリアの51件となっています。
歴史的、文化的に重要な地域にはたくさんの世界遺産が存在するのですね。
日本にも、歴史的、文化的な遺産がたくさん存在していて、多くの世界遺産を見ることが出来ます。
世界遺産のある県
次に、日本の世界遺産が登録された経緯について見てみましょう。
日本で一番最初に世界遺産が登録されたのは、平成5年、1993年のことです。
当時登録された世界遺産は以下の4つです。
- 法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)
- 姫路城(兵庫県)
- 屋久島(鹿児島県)
- 白神山地(青森県、秋田県)
まず最初に、平成5年12月に世界文化遺産として姫路城と法隆寺が登録されました。世界文化遺産とは、文化庁が国宝や重要文化財などに指定している歴史的、普遍的価値のあるものの中から推薦するものです。
「日本には25件の世界遺産がある」というのを知ったうえで、その世界遺産が何県にあるのかみなさんはご存じでしょうか?
身近で有名なのは、修学旅行の定番「京都」「奈良」や「鎌倉(神奈川)」ですね。
世界遺産が存在する都道府県は以下の27都道府県になります。詳しくは以下の通りです。
47都道府県中27都道府県(北海道、青森県、岩手県、秋田県、栃木県、群馬県、東京都、富山県、山梨県、岐阜県、静岡県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、島根県、広島県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、沖縄県)
意外にも、日本の都道府県の約半数以上が当てはまっている事になります。
ランキング順にすると、
- 第1位【3件】奈良県・鹿児島県・岩手県
- 第2位【2件】北海道・青森県・秋田県・東京都・静岡県・広島県・福岡県
- 第3位【1件】栃木県・群馬県・富山県・山梨県・岐阜県・三重県・京都府・滋賀県・大阪府・兵庫県・和歌山県・島根県・山口県・佐賀県
- 長崎県・熊本県・沖縄県
という結果になります。
では、ランキング順に都道府県と世界遺産についてご紹介していきます。
【第一位】奈良県・鹿児島県・岩手県
奈良県
- 法隆寺地域の仏教建造物
- 古都奈良の文化財
- 紀伊山地の霊場と参詣道
言わずと知れた、歴史的観光地です。
法隆寺は「世界最古の木造建築物」といわれており、世界的にも重要な建造物で日本国内の観光客、学生の修学旅行はもちろん、海外からの観光客も多いです。
鹿児島県
- 明治日本の産業革命遺産
- 屋久島
- 沖縄県北部及び西表島
1993年に日本で初めて世界自然遺産に登録された「屋久島」、2015年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」のうち3つの構成資産、そして2021年に世界自然遺産に登録された「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の3つの世界遺産があり、2つの世界自然遺産を有する唯一の都道府県になりました。
岩手県
- 御所野遺跡「北海道・北東北の縄文遺跡群」
- 橋野鉄鉱山「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」
- 平泉「平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-」
岩手県は、奈良県、鹿児島県に並び国内最多の3つの世界遺産を有する県となっています。歴史的遺跡が多く、縄文時代の遺跡群や明治時代の産業跡や古い寺院が多数存在し、それらは考古学的、文化的に重要な場所となっています。
平泉は、日本列島北部領域において11世紀から12世紀に奥州藤原氏によって、仏教に基づく理想世界の実現を目指し造営された政治・行政の拠点です。平泉の仏国土(浄土)思想は他に例をみないということで、平成23年に世界遺産に登録されました。
世界遺産に登録されているのは、中尊寺、毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡、金鶏山の5つです。重厚に金箔が貼られた中尊寺金色堂は、奥州藤原氏の巨大な富を反映しています。
【第二位】北海道・青森県・秋田県・東京都・静岡県・広島県・福岡県
北海道
- 知床
- 縄文遺跡群
北海道東部に位置する知床は、知床半島と沿岸地域が世界遺産として登録されており、他の地域では発見できない動物や豊富な森林と海洋から優れた自然美を有する「自然遺産」として登録されています。
観光としても人気ですが、近年の温暖化と自然保護から2005年に登録されました。遺産地域は環境庁、林野庁によって各種の保護地域に指定されていて、原生的な自然が残されることが担保されています。
また、縄文遺跡群は、岩手や秋田など東北の各地域にわたって発見された17か所からなる遺跡群のうち、北海道には6か所あり、縄文時代の生活を知る為のヒントとなる様々なものが発掘されています。旧石器時代とも呼ばれた縄文時代の集落群や土製の日用品、墓地や祭壇といった当時の生活様式を知る手がかりとなるものが出土しています。
青森県
- 白神山地
- 三内丸山遺跡
白神山地は、青森県南西部から秋田県北西部にまたがる130,000haに及ぶ広大な山岳地帯の総称です。 このうち原生的なブナ林で占められている区域16,971haが、1993年12月に世界遺産として登録されました。
地形の特徴は、深い谷が入り組み、岩壁が急傾斜をなしているため、落差の大きい滝が多く、景観に優れています。また人為的な影響をほとんど受けていない原生ブナ林が東アジア最大規模で分布していること、その生態系が世界的にも貴重であるとして世界遺産に登録されました。
秋田県
- 白神山地
- 北海道 • 北東北の縄文遺跡群
白神山地は、先述の通り青森県南西部の県境と秋田県北西部の県境をまたぐ形に分布しています。前述の通り優れた景観を有する原生的なブナ林が世界的にも貴重として登録されました。
また、縄文時代遺跡群は北海道から岩手県、秋田県にかけて見つかった17か所の遺跡群の総称で、秋田県内には「大湯環状列石」と「伊勢堂岱遺跡」があり、縄文時代の文化様式、精神世界を知る手がかりとなっています。
東京都
- ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―
- 小笠原諸島
東京都初の世界遺産は、「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」として、「国立西洋美術館」が2016年に登録されました。
パリを拠点に活躍した建築家ル・コルビュジェの作品の中から、三大陸7か国(フランス、日本、ドイツ、スイス、ベルギー、アルゼンチン、インド)に所在する17資産で構成され、日本からは、東京都台東区にある「国立西洋美術館」が登録されています。建築の実践が全地球規模で行われるようになったことを示す物証といえるでしょう。
小笠原諸島は、平成23年に世界遺産に登録されました。小さな海洋島における生態系が、生物進化を示す見本として世界的にも貴重な価値があるとし、自然遺産として登録されています。東京から南に約1,000キロ余りの、30の島々からなる小笠原諸島は、亜熱帯性の気候で、小笠原諸島でしか見られない固有種の割合が高いことが高く評価されています。
静岡県
- 富士山ー信仰の対象と芸術の源泉ー
- 明治日本の産業革命遺産
神聖で荘厳な姿をしている富士山は、山頂にある噴火口の底部に浅間大神が鎮座すると考え、その高さである八合目から山頂までを神聖性の高い区域と考えられ、信仰の対象とされてきました。また、富士山は、19世紀に普及した浮世絵にもよく描かれているだけでなく、西洋芸術にも、モチーフとして描かれることが多かったことから、世界でも高く評価され登録に至りました。
静岡県でもう一つ世界遺産として登録されているのは、韮山反射炉です。反射炉とは鉄などの金属を溶かして鉄製砲を鋳造するための溶解炉のことで、アヘン戦争の契機に軍事力強化の為幕府によって築造されました。幕末期に築造された反射炉で現存しているものしゃ韮山反射炉のみということで、世界遺産に登録が決まりました。
候補地
「世界遺産」に登録されるために必要な条件とは何なのでしょうか?
世界遺産登録を決定しているユネスコ、つまり国際連合教育科学文化機関です。 世界遺産は、年に1回開催されるユネスコの政府間委員会で“採択”されているそうです。ユネスコによって、登録の基準が以下の10項目決められています。
(i)人間の創造的才能を表す傑作である。
(ii)建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
(iii)現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
(iv)歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
(v)あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)
(vi)顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
(vii)最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
(viii)生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
(ix)陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
(x)学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。
世界遺産は、政府や国際機関によるいくつもの手続きや調査を得たうえで登録されます。 世界遺産条約締約国の中から選ばれた21カ国によって構成される委員会で、世界遺産リストや危機遺産リストを作成しています。 また、登録された遺産のモニタリングや保護を支援し、世界遺産基金を用いて援助を行っています。
日本には、一度は暫定リストに入ったもののいまだ承認されていない場所があります。
- 北海道東部の窪みで残る大規模竪穴住居跡群 (北海道)
- 最上川の文化的景観-舟運と水が育んだ農と祈り,豊饒な大地- (山形県)
- 松島-貝塚群に見る縄文の原風景 (宮城県)
- 水戸藩の学問・教育遺産群 (茨城県)
- 足尾銅山-日本の近代化・産業化と公害対策の起点- (栃木県)
いずれも、歴史的に重要な建造物や自然、町たちです。
過去には、暫定リストには「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」や「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」と「北海道・北東北の縄文遺跡群」があげられていましたが、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」と「北海道・北東北の縄文遺跡群」は2021年7月に開かれた拡大第44回世界遺産委員会で、無事に登録が了承されました。
しかしながらその中の、「佐渡鉱山」は、朝鮮人を強制労働させていたとして、韓国抗議の声があり、推薦を撤回するよう求められています。
このように、文化的、歴史的背景から世界遺産登録が難しいケースもあります。世界遺産に登録されるということは、それだけ高い価値と評価を得られている遺産ということを示してくれています。
皆さんも、世界遺産の価値をもう一度意識的に感じてみてはいかがでしょうか?