カスタマーサクセスとは?ポイントと成功事例

カスタマーサクセスとは、顧客側の成功を支援する取り組みのことであり、カスタマーサポートとは異なるアプローチです。

この記事では、カスタマーサクセスの定義や主な業務内容、顧客セグメントや追跡すべきKPI、ヘルススコアについて紹介します。

また、事例としてラクサス・テクノロジーズと電脳交通のカスタマーサクセスの成功事例も取り上げます。

カスタマーサクセスとは? 

カスタマーサクセスとは、 顧客側の成功を支援する取り組みのことです。 

このアプローチを取り入れる企業には、スターバックス、Salesforce、Sansanなどがあります。

このような企業は、サブスクリプション型ビジネスモデルを採用しており、このモデルは、新規顧客の獲得が難しくなった現代において、既存顧客との長期的な関係構築と顧客当たりの単価拡大の重要性を高めています。このような背景から、カスタマーサクセスは注目を集めています。

先ほどの流れをまとめると、サブスクリプションやSaaSの普及により、顧客への製品販売後に始まる顧客サポートが重視されるようになりました。

また、カスタマーサクセスを強化することによって、このような流れも期待できます。 

顧客がサブスクリプションとして契約を締結する場合、期待する価値を受け取れなければすぐに解約する可能性があります。

しかし、逆に言えば、顧客が自社製品を有効に活用し、期待した価値を得ると、契約更新はもちろん、上位サービスへのアップグレードや関連製品の購入など、付加価値のある選択をする可能性が高くなります。これによって、顧客当たりの単価が拡大し、企業の売上増加に繋がると期待されます。

さらに、カスタマーサクセスを通じて、ロイヤル顧客として大口の顧客を獲得することも期待できます。こうした顧客が自社製品の価値を実感し、満足度が高まると、自ら積極的に製品を宣伝し、新たな顧客を獲得する手助けをしてくれる場合もあります。このように、顧客に成功体験を提供することで、自社ビジネスの成長速度は加速することができます。

また、国内においては、人口と企業数が減少しており、新規顧客の獲得が困難になっています。そのため、新たな顧客を開拓することよりも、既存顧客との長期的な関係性を築くことが重要とされています。カスタマーサクセスは、このような状況下において、既存顧客との良好な関係性を築くことができる手段の1つとなっています。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い 

カスタマーサポートとは、顧客が課題を感じ、その課題が提示されたタイミングで迅速に応答し、解決するといったものです。 

また、カスタマーサクセスの方は顧客が期待する成果や成功を実現できるよう、その実現に至るまでに起こるであろう課題を予測し、先回りして解決するといった内容です。 

2つの相違点として、顧客への姿勢についての特徴が挙げられます。 

カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに対して「受動的」な姿勢を取り、対応することが主な役割です。一方、カスタマーサクセスは、顧客が抱える課題を事前に把握し、先回りして解決する「能動的」な取り組みです。

このような異なる姿勢から、両者が重視する指標も異なります。

カスタマーサポートでは回答までの時間や問題解決率などの効率性が重視されますが、カスタマーサクセスではリテンション率やアップセル/クロスセルなどの成果を重視することが一般的です。

これらの2つの共通点として、 カスタマーサクセスと顧客体験は密接な関係にあります。 

それは、カスタマーサクセスとはよりよい顧客体験を提供することだからです。 

顧客体験とカスタマーサクセスには、微妙な違いがあります。顧客体験は、顧客が製品やサービスを活用したときに得る全体的な印象を指します。一方、カスタマーサクセスは、データを活用して顧客の課題を解決することで、顧客の成功を促進する取り組みです。

カスタマーサクセスに取り組むことで、必然的に顧客体験は向上するでしょう。顧客が製品やサービスを活用する上での課題や問題を解決することで、顧客はより良い体験を得ることができ、その結果として長期的な関係性を築くことができます。

具体的な内容 

カスタマーサクセスの主な業務内容は以下の通りです。 

  • 顧客データ管理・データ分析 
  • 顧客・社内対応 
  • 導入支援 
  • コミュニティ運営 

それぞれの業務内容について解説します。 

顧客データ管理・データ分析 

カスタマーサクセスを開始する際には、社内に散在する顧客データを集約することが最初の仕事と言えます。

顧客データを一元化することで、販促やサービス改善のための効果的な分析が可能となり、顧客理解を深めることができます。

このように顧客データを集約することで、顧客の課題を先読みして解決したり、最適なタイミングで提案を行うことができるようになります。

さらに、データの一元化によって、部門間の協調が促進されます。営業やマーケティングなどのチームも、必要なデータに簡単にアクセスでき、顧客成功を優先した施策を推進することができます。これが会社の成長やサービスの成長につながるのです。

顧客・社内対応 

カスタマーサクセスは、コンサルタントのように顧客の課題を解決し、顧客を成功へと導く役割を担います。

顧客との接点は、契約を締結した直後から始まります。しかし、顧客は新しい担当者とのコミュニケーションに不安を感じることがあります。そのため、早い段階で信頼ベースの良好な関係を築くことが重要です。

顧客との良好な関係を築けなければ、顧客が本音で話さない、アドバイス通りに動かないなどの問題が生じます。カスタマーサクセスの部門長やマネージャーは、社内外でカスタマーサクセスのアピールをすることが必要です。

カスタマーサクセスは、企業の全業務の中心に位置することが重要です。社内でカスタマーサクセスの重要性を説き、メディアを通じてカスタマーサクセスの取り組みをアピールし、社内にカスタマーサクセスの文化を構築することが必要です。

導入支援 

カスタマーサクセスの究極の目標は、顧客がカスタマーサクセスを必要としないほど、自社製品を使いこなせるようになることです。ただし、カスタマーサクセスの重要性が顧客に認知されていなければ、顧客の成功を支援するために行われる取り組みも意味をなしません。

そのため、導入支援では、顧客が製品を効果的に活用できるように、セットアップやトレーニングなどを提供します。これにより、顧客が自社製品を十分に理解し、必要なスキルを身に付けることができます。

そして、究極的には、カスタマーサクセスの取り組みが功を奏し、顧客が自力で製品を最大限に活用できるようになることが目標となります。そうなることで、顧客は自社製品に対する信頼を高め、自社との関係を長期的かつ良好なものにすることができます。

コミュニティ運営 

カスタマーサクセスは、顧客エンゲージメントやロイヤルティの向上を目的に、コミュニティを運営します。

コミュニティを構築することで、企業とユーザーが双方向にコミュニケーションを取ることができます。顧客からのフィードバックを得ることができたり、ユーザー同士が課題を解決し合ってロイヤルティを高めたりすることができます。

また、コミュニティを通じて醸成されたロイヤル顧客は、SNSやブログなどで積極的に自社製品に関する情報発信をするため、新規ユーザーの獲得が期待できます。さらに、コミュニティに蓄積された実際のユーザーの製品活用法や事例は、見込み客の興味関心を高めることができます。

このように、コミュニティはカスタマーサクセスにとって強力なツールとなります。

カスタマーサクセスの提供内容 

カスタマーサクセスでは、顧客を大きく以下3つのセグメントに分類します。 

セグメント化をすることで、ターゲットなどを何らかの指標に基づいて区切ると、市場においては共通のニーズ、製品やサービスへの認識の手段、購買に決定するまでの過程や、購買行動において共通する顧客層の集団など分析することができます。 

ハイタッチ 

ハイタッチとは、高額契約の顧客向けに対応するカスタマーサクセスのことです。 

ユーザー当たりの単価が非常に高いため、導入支援や社内トレーニングの実施などを伴走形式で提供します。 

ハイタッチの担当者は、共感をもって顧客とコミュニケーションを取り、顧客の課題やニーズを把握しなければいけません。 

ロータッチ 

ロータッチとは、ハイタッチとテックタッチの中間層であり、ハイタッチの次に優先度が高いです。ロータッチにおいては、セミナーや自動メールの配信など1対複数のアプローチで顧客を支援します。 

テックタッチ 

テックタッチとは、個人ユーザーなどの契約規模の小さいユーザー層です。 

テックタッチに個別サポートをするのは費用対効果が悪いため、テクノロジーを活用して、サポートの自動化を図ります。 

具体的には、ナレッジベースやFAQ、ガイダンス動画などを準備し、ユーザーがセルフラーニングできる環境を整えます。 

また、カスタマーサクセスを実施するために、以下の取り組みも重要であると言えます。 

カスタマーサクセスに取り組むためには、次にあげる5つのKPI(KeyPerformance Indicators、重要経営指標)と、「顧客がその商品やサービスをどれだけ使い続けたいと思ってくれているか」を測る「ヘルススコア」を意識します。 

「ヘルススコア」については、次のセクションで取り上げますので、まずはKPIから見ていきましょう。 

成功のポイント 

カスタマーサクセスへの取り組みでは、以下の5つのKPIを追っていきます。 

  • 解約率(チャーンレート) 
  • 維持率(リテンションレート) 
  • オンボーディング完了率 
  • アップセル率・クロスセル率 
  • NPS®(ネットプロモータースコア) 

チャーンレート(解約率) 

チャーンレートとは、既存顧客が製品サービスを解約する割合であり、カスタマーサクセスが追うべき指標の一つです。 

このチャーンレートが悪ければ、既存顧客の維持ができていないないことを意味します。 

そのため、多くの新規顧客を獲得できていたとしても、事業の成長にはつながりません。 

また、チャーンレートが上がることで、解約した顧客によるネガティブな口コミや評判が生まれるため、新規顧客の獲得が困難になります。 

カスタマーサクセスは、常にチャーンレートを意識して、業務に取り掛かりましょう。  

リテンションレート(維持率) 

リテンションレートとは、製品サービスを継続、維持して利用する顧客の割合です。 

顧客は製品サービスに満足することで、継続的に利用するため、リテンションレートからユーザーに価値を提供できているかどうかを測定できます。 

チャーンレートとリテレーションレート、うまいバランスを取ることが重要といえます。 

オンボーディング完了率

オンボーディングとは、新規顧客にサービスを理解してもらい、利用を定着してもらうための期間を指します。

オンボーディング完了とは、サービスの基本的な操作方法の理解や初期設定が完了し、運用が開始された状態を示します。企業ごとに異なる定義があり、達成すればオンボーディング完了と見なします。オンボーディング完了率を重視するのは、オンボーディングが長期化すると、解約リスクが高くなるためです。

顧客がサービスを利用していない状態で契約が継続すると、コストがかかるため、顧客、営業、CSMにとって問題です。顧客がオンボーディングが完了しない理由として、手間がかかる、メリットを感じていない、不明点があるなどがあります。

オンボーディングが長引くことを防止するには、できる限り短期間で完了させることが重要です。また、オンボーディングには、チュートリアルの準備、問い合わせ方法(チャンネル)の増加、掲示板の作成、ユーザー会の定期開催などの手法があります。

顧客の導入意欲が高いうちにオンボーディングを進めることが大切です。

アップセル/クロスセル率 

アップセルとは既存顧客に上位製品へアップグレードしてもらうことです。 

また、クロスセルとは関連製品を購入してもらうことです。 

この、アップセル/クロスセル率を追えば、カスタマーサクセスの取り組みが売り上げ拡大につながっているかどうかを測定できます。 

ただし、アップセル/クロスセル率を高めようと、営業色の強いアプローチをしてはいけません。 

アップセル/クロスセルにつながらないだけではなく、チャーンを招く恐れもあります。これらはあくまでも、顧客にとって本当に必要なタイミングで提案をするようにしましょう。 

NPS(ネットプロモータースコア) 

NPSとは、顧客が自社製品をどれだけ気に入っているのかどうかを数値化した指標です。 

調査方法は、顧客に自社製品を同僚や友人に推奨する度合いを10段階で評価してもらい、回答を下記の通りセグメント分けします。 

  • 9~10点:推奨者 
  • 7~8点:中立者 
  • 0~6点:批判者 

推奨者の割合から批判者の割合を引いた数がNPSとなります。 

NPSは顧客満足度よりも正確性が高いことが特徴です。 

NPSを追跡することで、顧客のセグメント分けができるようになり、推奨者にはアップセルの提案をするなどの効果的な施策展開が可能になります。 

ヘルススコア 

ヘルススコアとは、顧客が自社製品を継続利用するかどうかをスコア化した指標です。 

自社の製品の利用状況や定着率、またカスタマーサポートの問い合わせ回数などの複数要素を基に算出します。 

ヘルススコアを見ることで、顧客の将来的な行動(更新や解約など)を把握できるため、チャーン率と同じくらい重要な指標です。 

これらは定期的にヘルススコアをチェックして、最適な施策を推進しましょう。 

事例 

ラクサス・テクノロジーズ 

ラクサス・テクノロジーズは、ブランドバックのサブスクリプションサービスを展開しています。 

同社の平均継続率(リテレーション率)は95%と極めて高い数字を誇ります。この高い平均継続率に貢献したのが、カスタマーサクセス視点でのマーケティング。 

同社は顧客に提供する価値や提案の流れを3つのフェーズに分けています。 

  • 導入期:ブランドバックを持ち、出かけたときに味わう高揚した気持ち
  • 定着期:2つのバッグをりられるダブルプランの提案 
  • 成熟期:レンタル商品の購入CtoCサービスの利用 

導入期においては、顧客が価格ではなく、自身の好みに基づいて製品を選べるように実売価格の掲載を廃止。また、すべての製品にコーディネートを掲載し、好きなバッグを交換できるサービスも提供したのです。 

これは、ラクサスは利用期間が3か月を超えると継続率が劇的に高まるとデータより分かっているため、導入期に注力しています。 

定着期と成熟期に移った顧客には、ダブルプラン(アップセル)や CtoCサービス(クロスセル)などの提案をし、売り上げを拡大。 

また、知人の紹介制度を設けることで、優良顧客が新規顧客を連れてくる流れも構築できいることから、成功したといえます。 

電脳交通 

電脳交通はITを通して、タクシー会社の業務を支援する企業です。 

同社には10人ほどのスタッフで構成されるカスタマーサクセス部門があります。 

カスタマーサクセス部門は、配車システムの導入支援や活用法のレクチャーは当然ながら、タクシー会社からのフィードバックを収集しているのです。 

利用者からフィードバックを寄せることで、次回の利用調査や満足度、また改善点がわかることで、KPIなどを見出すことができます。 

電脳交通では、フィードバックをすぐに全社で共有し、改善へと反映させることで、顧客満足度の高いプロダクト開発ができています。 

改善の頻度とスピードが決め手となり、大手タクシー会社の全社導入が決定したのです。 

まとめ

この記事では、カスタマーサクセスとは何か、その業務内容やKPI、および成功事例について紹介しました。

カスタマーサクセスとは、顧客側の成功を支援する取り組みであり、カスタマーサポートとは異なります。カスタマーサクセスの主な業務内容には、顧客データ管理・データ分析、顧客・社内対応、導入支援、コミュニティ運営などがあります。

カスタマーサクセスでは、顧客をハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの3つのセグメントに分類し、それぞれに合った対応を行います。また、解約率、維持率、オンボーディング完了率、アップセル率・クロスセル率、NPS®といったKPIを追跡し、顧客の成功を測定します。

ヘルススコアとは、顧客が自社製品を継続利用するかどうかをスコア化した指標であり、重要なKPIの一つです。

記事では、ラクサス・テクノロジーズや電脳交通のカスタマーサクセス事例を紹介し、どのように顧客を成功に導いているかを示しました。今後も、顧客の成功にフォーカスしたカスタマーサクセスの重要性は高まっていくでしょう。