ガソリン補助金は12月末まで延長決定!制度の仕組みや課題を解説

9月4日時点でレギュラーガソリンの店頭現金小売価格は186.5円でした。16週連続の値上がりを記録しており、ガソリン高騰に困惑している方も多いはずです。

そのようななか、政府は負担軽減策として、ガソリン補助金を12月末まで延長することを決定しました。しかし、「結局いくらになるの?」「いつまでガソリンの高騰が続くのか?」など疑問に感じている方も多いでしょう。

そこで本記事ではガソリン補助金の制度や仕組み、課題について徹底解説します。

ガソリン価格はどのように決まる?

そもそもガソリンの販売価格は、どのように決まるのか分かりにくいと感じませんか。そこで、まずはガソリンの販売価格の決まり方について紹介します。

ガソリンの販売価格の内訳は以下のとおりで、このなかでも大きなウェイトを占めるのは「原油価格」と「税金」です。

  • 原油価格
  • 精製費
  • 輸送費
  • 税金
  • 企業の利益

原油価格は需要供給のバランスや為替の影響により変動し、例えば原油1バレルあたり90ドルのように取引されています。ちなみに原油1バレルあたり約40リットルのガソリンを精製できます。※1バレルは158.987リットルです。

次にガソリンにかかっている税金の内訳は以下のとおりです。

税金の種類税額
ガソリン税(揮発油税)1リットルあたり53.8円
石油石炭税1リットルあたり2.04円
地球温暖化対策税1リットルあたり0.76円
消費税(ガソリン本体価格+税金)×10%

ガソリンの販売価格が186.5円とすると、ガソリンの本体価格は112.94円で税金の合計が73.56円となります。

ガソリン補助金とはどのような制度

ガソリン補助金とは、コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」に基づいてガソリン小売価格の急騰を抑制し、消費者の負担軽減を目的とする制度です。また正式名称は「燃料油価格激変緩和補助金」と呼びます。

具体的には全国平均ガソリン価格が170円以上になった場合に、「燃料油元売り業者」に補助金を支給します。これにより、ガソリンスタンドといった燃料油販売業者への販売価格を抑制し、最終的に消費者への販売価格を抑えるといった流れです。

つまり、ガソリン補助金は消費者に直接支給されるのではなく、石油精製業者や石油輸入業者に支給されています。

本来は2023年9月に支援金額を徐々に減らして終了する予定でした。しかし最近のガソリン高騰が止まらない流れを受けて、2023年12月末までの延長を決定しています。さらに、10月5日以降は支援金の拡充も決定され、10月末にはガソリンの小売価格が175円に抑えられる予定です。

ガソリン補助金の支援上限金額の変遷は以下のとおりです。

  • 2022年4月25日の週から上限を35円に拡充、205円以上は1/2を支援
  • 2023年5月1日から33円、2月は31円、3月は29円、4月は27円、5月は25円と上限を減少し、超過分は1/2を支援
  • 2023年5月29日の週からは上限以下の補助額を10%減、以後2週間ごとに10%を減額し、上限超過分は5%増
  • 9月で終了する予定が12月末まで延長
  • 2023年9月7日以降は168円から17円を超える分は全額支援し、17円以下の部分については10月4まで30%、10月5日から12月31日まで60%を支援

またガソリン補助金の対象は、ガソリン(レギュラー、ハイオク)・軽油・灯油・重油・航空機燃料となります。

ガソリン補助金がなければ、いくらになっていたのか

2022年1月にレギュラーガソリンの全国平均が170円を超えたことから発動したガソリン補助金ですが、もし支援がなければ小売価格はいくらになっていたか気になりませんか。

経済産業省がまとめた資料によると、「補助がない場合のガソリン価格」と「補助後のガソリン価格」の関係性は以下のとおりです。

出典:経済産業省「燃料油価格激変緩和補助金

ガソリン補助金は最大41.9円の抑制につながっており、なければ1リットルあたり215.8円に達していたと予想されています。そのため、ガソリン補助金は激変緩和措置の役割を果たしたといえるでしょう。

また2022年5月29日からの補助率の引き下げにより、徐々に小売価格が上昇していることもグラフから確認できます。

ガソリン補助金がなくなったらいくらになる?

2024年1月以降、ガソリン補助金が終了したらガソリン小売価格がいくらになるのかについて考察します。

まずは、2022年1月以降の原油価格の推移は以下のとおりです。

出展:ジェトロ「原油価格の推移(2022年~2023年7月)

2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した直後は、原油の需要供給バランスが崩れ、1バレル130ドルを超えるほどに急騰しました。しかし、2022年12月以降は70ドルから90ドルで取引されています。

今後も同程度の価格帯で原油価格が推移すると仮定すると、同期間中のレギュラーガソリンの「補助がない場合のガソリン価格」からいくらになるのかを推定できます。

先のレギュラーガソリン・全国平均価格のグラフより、2022年12月以降の「補助がない場合のガソリン価格」は176.1円~197.3円です。つまり、ガソリン補助金が終了すると、1リットルあたり200円程度になる可能性があるといえるでしょう。

原油価格が高騰する理由

ガソリン補助金は12月末まで延長されましたが、いつまでも続く制度ではありません。そのため、今後のガソリン価格の見通しを立てておくことが重要です。

そもそも原油価格が高騰している理由は、以下の3つが挙げられます。

  • 石油需要の増大

米国や中国、あるいはインドをはじめとする途上国での石油需要が増大し、高騰を招いている

  • 石油産油国による原油の減産

石油輸出国機構(OPEC)とロシア・メキシコなどの石油産出国で構成するOPECプラスは、2024年末まで減産方針の維持を発表

  • 円安の影響

為替相場が1ドル146円のように、円安が進むことで原油を調達・輸入するコストが増大している

これらの問題はすぐに解決することが困難なため、ガソリンの販売価格の見通しは明るいとはいえません。

ガソリン補助金の課題

たびたびの延長により、「ガソリン販売価格が高いうちは、ガソリン補助金制度が延長される」と思っている方もいるかもしれません。しかし、ガソリン補助金は消費者の負担が減る一方で、以下の3つの課題が指摘されています。

  • 市場価格を歪めている

補助金を投入することで市場価格が歪んでしまい、価格が高くなっても需要が減らないなど、市場のメカニズムが正常に作用しなくなる

  • 脱炭素社会の流れに逆行している

ガソリンが高騰すればできる限り使用しない動きが活発になり、脱炭素社会推進を加速すると予想されるが、ガソリン補助金はそのような脱炭素社会推進の流れに逆行している

  • 財政負担が増える

すでにガソリン補助金に4兆円が投じられており、今後延長するほどに財政負担が増える

これらの課題からガソリン補助金は一時的な負担軽減策で、いつかは終了する制度であることがわかります。

ガソリン補助金は2023年12月末まで延長

最近のガソリン高騰を受けて、ガソリン補助金は2023年12月末まで延長することが決定しました。しかし、それ以降は延長されるかは分からず、2024年1月から原油価格が下がるかも不透明な状態です。そのため近い将来、日本ではガソリン価格が200円を超えることもあり得るかもしれません。

ビジネスにおいてはガソリン補助金に頼るのではなく、ガソリン高騰を考慮したうえで、新規事業の立案や既存事業の見直しを図るほうが賢明といえるでしょう。

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