GX(グリーントランスフォーメーション)とは?企業の事例を紹介 

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、化石燃料を使わずにクリーンエネルギーを活用する取り組みや変革のことです。しかし、「もっと詳しく知りたい」「なぜ必要なの?」「取り組むメリットは何?」などの疑問がある方もいるでしょう。

そこで本記事では、GXの基礎知識や企業が取り組むメリットをわかりやすく解説します。

GXとは?脱炭素化の取り組みによる社会の変革

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、石油や石炭などの化石燃料の使用を極力控えて、温室効果ガスの排出削減の取り組みや社会の変革のことです。例えば、火力発電などの化石燃料に頼ったエネルギーから、風力発電などの再生可能エネルギーへのシフトが該当します。

カーボンニュートラルとは?温室効果ガスを排出ゼロに

GXの説明で必ずといっていいほど聞くキーワードが「カーボンニュートラル」です。

カーボンニュートラルとは、化石燃料の燃焼時に発生する温室効果ガスの排出を「全体でゼロ」にすることです。「全体でゼロ」がポイントで、排出量・吸収量・除去量などを合算してトータルゼロを目指しています。

2つの違いを簡単に説明すると、カーボンニュートラルは温室効果ガスをゼロにすることで、GXはその取り組みや変革となります。

GXが注目されている3つの理由

SDGsなど「持続可能性」に世界が関心を集めるなか、GXも3つの理由から注目されているキーワードです。

  • 地球温暖化の進行
  • カーボンニュートラル宣言
  • ESG投資の拡大

地球温暖化の進行

1つ目の理由は、地球温暖化の進行に歯止めがかからないためです。実際に、世界の平均気温は100年で0.74℃上昇しています。さらに21世紀末には4℃前後の上昇が予測され、急速に進行すると危惧されています。

地球温暖化による悪影響は以下のとおりです。

  • 高潮や洪水の発生リスクの増加
  • 異常気象の増加
  • 干ばつによる食料不足
  • 水資源の枯渇
  • 生物多様性への影響

このような悪影響がすでに世界で発生しているなか、さらなる進行を食い止めるために、企業にもGXの取り組みが求められているのです。

参考:気象庁「世界の年平均気温偏差の経年変化

カーボンニュートラル宣言

2つ目の理由は、2020年10月に政府が2050年までにカーボンニュートラルの実現を宣言したためです。さらに、2030年の達成目標として、2013年比で46%の温室効果ガス削減を掲げています。2019年時点で日本の二酸化炭素排出量は11.1億トンで、目標達成のためには国・地方・企業による取り組みが必要不可欠な状態です。

そのため政府もGXを促進するために、「GXリーグ」の創設や150兆円の官民によるGX投資、エネルギー安定供給の確保などの支援策を打ち出しています。ちなみに「GXリーグ」とは、GXに取り組む企業が社会変革と新規市場の創造のために協働する場です。2022年4月1日時点で440社が賛同しており、ますます広がっていくことが期待されています。

つまり、このような背景から「GX」の注目が高まっているのです。

参考:経済産業省「GXリーグ基本構想

ESG投資の拡大

引用:国土交通省「ESG投資の動向について

3つ目の理由は、ESG投資の市場が拡大していることです。具体的に国内のESG投資資金は、2016年の57兆円から2020年の310兆円と5.8倍に急拡大しています。

ESGとは「環境」「社会」「ガバナンス」の略です。ESG課題の解決にどのように取り組んでいるかを投資の判断基準とするのがESG投資です。GXは地球温暖化や温室効果ガス排出といったESG課題への取り組みのため、ESG投資が拡大した今、企業価値を高めるためにも注目されています。

ステークホルダーの利益向上のためにも、企業はGXの取り組みが求められているといっても良いでしょう。

参考:金融庁「サステナブルファイナンス推進の取り組み

企業がGXに取り組む3つのメリット

GXは地球温暖化の防止に役立つだけではなく、取り組む企業にもメリットがあります。具体的には以下の3つです。

  • ブランディング向上
  • 人材・資金の確保
  • コストの削減

ブランディングの向上

GXに取り組むことでブランディングの向上につながります。なぜなら、社会問題解決に積極的に貢献している企業としてイメージアップを図れるためです。例えば、GXリーグに賛同している企業と聞くと、先進的な取り組みをしていると感じませんか。このように、イメージアップやブランディングの向上に役立つのが1つ目のメリットです。

人材・資金の確保

人材・資金の確保しやすくなるのがメリットです。ESGを投資判断としている投資家から投資先として認知されますし、社会貢献に積極的な企業は働き手の愛社精神を高めるためです。また、DX推進のための補助金を活用することで、資金が確保しやすくなるといった側面もあります。

DXにおける国の基金や補助金の一例は以下のとおりです。

  • グリーンイノベーション基金
  • クリーンエネルギー自動車導入促進補助金
  • 商用車の電動化促進事業
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
  • 事業再構築補助金(グリーン成長枠)

このような基金や補助金で、コストを抑えながら成長を図れるでしょう。

コストの削減

GXに取り組むとコストの削減につながります。温室効果ガス排出量の削減のために、「エネルギーの削減」や「再生可能エネルギーへのシフト」によりエネルギーの使用量が減るためです。また温室効果ガスの削減量が余った場合は、カーボン・クレジット市場の排出量取引で利益を上げることもできます。

企業のGXの取り組み事例

「GXは実際にどのように取り組めば良いの?」と感じている方はいませんか?

ここでは参考のために、3社の取り組み事例を紹介します。

トヨタ自動車株式会社 

引用:トヨタ自動車株式会社「ESG(環境・社会・ガバナンス)に基づく取り組み

トヨタは1960年代から「環境」への取り組みを継続しており、環境負荷を減らすことに長年尽力している企業です。加えて、2015年から「トヨタ環境チャレンジ2050」に取り組んでいます。「トヨタ環境チャレンジ2050」の目的は、持続可能な社会の実現に向けて車のマイナス要因を限りなくゼロに近づけることです。具体的に2050年までに達成すべき6つのチャレンジ項目を掲げています。

ENEOS株式会社

引用:ENEOS株式会社

ENEOSの取り組みは、省エネルギー型バイオマス潤滑油・グリースの開発・販売です。サトウキビ・大豆などの植物から製造することで、CO2の排出量を潤滑油で87%、グリースで58%の削減に成功しています。すでにシリーズ化され、その名も「ENEOS GXシリーズ」で販売しています。

日清食品グループ

引用:日清食品グループ「サステナビリティ

日清食品グループの取り組みは、「カップヌードル」の容器を「バイオマスECOカップ」に変更したことです。従来のプラスチックの容器と比べると、CO2の排出量を16%削減しました。また、プラスチックトレーの廃止など、環境に配慮した取り組みも実施している企業です。

まとめ:GXでブランディング・企業価値を向上させよう

GXはカーボンニュートラルの実現に向けて、石油や石炭などの化石燃料を極力使用せず、温室効果ガスの排出量を抑える取り組みや変革のことです。 企業においては、社会貢献という側面だけではなく、技術革新により新たなビジネスチャンスにもなるでしょう。国の手厚いサポートやESG投資の拡大といった背景もあるので、ブランディング・企業価値の向上のために、GXに取り組んでみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

yusuke.terasaki@udx.co.jp