2023年10月1日にステルスマーケティング規制、いわゆるステマ規制が施行されました。もし抵触した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されることもあります。
マーケティングに関わる業種や自社商品・サービスを販売している事業者は、信頼を失わないためにも押さえておくべき規制です。内容を理解したうえで、効果的な対策をしましょう。
本記事ではステルスマーケティング規制の概要と、問題となる事例を紹介します。
ステルスマーケティングとは?
ステルスマーケティングとは、消費者に広告であることを隠し、商品やサービスを宣伝する行為です。
例えば、企業から商品の紹介を依頼されたインフルエンサーが広告と告知せずに、自分のお気に入り商品として紹介することが該当します。
ほかにも、ECサイトの自社商品の口コミを獲得するために、消費者に特典をプレゼントして投稿を依頼したり、関係者が投稿したりすることもステルスマーケティングです。
そもそもステルスマーケティングがなぜダメなの?
そもそもステルスマーケティングがなぜ問題なのか、疑問に思う方もいるでしょう。ステルスマーケティングが問題視される理由は主に以下の3つです。
- 消費者が誤認して商品を正しく選択できない
- インフルエンサーの影響力が大きい
- 企業やインフルエンサーの信頼がなくなる
最近では上記の理由から、やってはいけないマーケティング手法として消費者にも広く認知されています。
問題点① 消費者が誤認して商品を正しく選択できない
ステルスマーケティングの問題点は、消費者の正しい商品・サービスの選択を阻害する恐れがあることです。あたかも第三者による口コミを装うことで、消費者を特定の商品・サービスの購入に誘導できるためです。
例えば、商品の良い点ばかり強調し欠点をあえて紹介しない、あるいは競合商品・サービスの評価を下げるなどの行為が挙げられます。
もし消費者が事業者による告知と認知していれば、偏った見方で紹介されている可能性を考えるでしょう。しかし、ステルスマーケティングは第三者の意見として発信されるため、そのような可能性を考慮せず誘導されやすくなります。
このような理由から消費者の正しい商品・サービスの選択が阻害され、不利益を被る可能性があると考えられています。
問題点② インフルエンサーの影響力が大きい
ステルスマーケティングの問題点は、大きな影響力を持つインフルエンサーがすることで、多くの消費者が誘導されてしまう点です。
インフルエンサーとは、主にSNSなどのソーシャルメディアで数万・数十万といった多くの方に支持されている人を指します。その影響力の大きさから、インフルエンサーに商品・サービスを紹介してもらうインフルエンサーマーケティングは、有効なマーケティング手法の1つです。
しかしインフルエンサーが広告の旨を隠して発信すると、「このインフルエンサーのおすすめなら良い商品だろう」と、多くの支持者が本人の考えだと誤認する可能性があります。
問題点③ 企業やインフルエンサーの信頼がなくなる
「ステルスマーケティングを実施している」と消費者に発覚すると、商品・サービスを販売している企業や情報を発信したインフルエンサーは消費者からの信頼を失います。
なぜなら消費者からすると、第三者の意見を参考にしたつもりなのに、広告だったと知ると「騙された」と感じるためです。
企業やインフルエンサーは信頼を大きく失うと、以降の活動に悪影響が出るかもしれません。リスクの大きさから企業やインフルエンサーの立場においても、ステルスマーケティングは問題があるといえます。
ステルスマーケティング規制の概要
ステルスマーケティングは問題のある手法として以前から知られていましたが、2023年9月30日以前は取り締まる規制がありませんでした。以前の景品表示法で規制されていたのは以下の3つです。
- 優良誤認表示
実際の商品・サービスより著しく良いものと誤認させる表示
- 有利誤認表示
価格や取引条件が著しくお得だと誤認させる表示
- 内閣総理大臣が指定する不当表示
内閣総理大臣が指定する「商品の原産国に関する不当な表示」「おとり広告に関する表示」など、6つの表示に関する規制
つまり、上記の3つの規制に該当しないようにステルスマーケティングをされると、手の打ちようがなかったのです。
そのような課題を解決するために、2023年10月1日よりステルスマーケティング規制が施行されました。この章では、ステルスマーケティングの概要についてわかりやすく解説します。
内容
ステルスマーケティング規制では、従来の景品表示法の禁止行為に加えて「ステルスマーケティング」が追加されました。景品表示法におけるステルスマーケティングは、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」と定義されています。
つまり、事業者は広告・宣伝活動のために行う表示で、消費者に第三者の表示であるかのような誤認を与えてはいけないと定められました。
対象媒体・コンテンツ
ステルスマーケティング規制の対象媒体はインターネット上の表示だけではなく、テレビや新聞、ラジオ、雑誌などの表示も含まれます。
インターネットの媒体の代表例は以下のとおりです。
- X(旧Twitter)
- TikTok
- YouTube
- ブログ
なお個人の感想といった広告でないものや、テレビCMのように広告であることが明確な表示は規制の対象外です。
また表示は一般消費者が閲覧できるコンテンツの全てが対象で、作成・投稿日時は関係ありません。5年前・10年前といった過去のコンテンツも規制の対象となる点に注意が必要です。
罰則・対象者
ステルスマーケティング規制に違反した場合は、消費者庁が措置命令を出し、それに従わないと刑事罰の対象になります。刑事罰は2年以下の懲役または、300万円以下の罰金が科されます。
ステルスマーケティング規制の罰則対象者は、商品・サービスを提供する事業者です。コンテンツを作成・発信したインフルエンサーやブロガー、アフィリエイターなどは罰則の対象外です。
※ブロガーはブログを書く人、アフィリエイターは成果型報酬広告(アフィリエイト)で収入を得ている人を指します。
ステルスマーケティング規制で問題となる事例
ステルスマーケティング規制では、事業者の広告であるのにその旨の表示がないと問題になります。例えば以下に該当し、事業者の表示であることが明記されていないケースです。
- インフルエンサーなどに商品紹介を依頼した場合
- インフルエンサーや消費者に商品を無償で提供し、SNSなどにレビュー投稿を促した場合
- ECサイトに出店している事業者が自社商品・サービスの購入者に、特典をプレゼントするなどしてレビュー記入を依頼した場合
- 謝礼を支払い口コミの投稿を依頼した場合
- 競合商品・サービスを自社より低く評価する口コミの投稿を依頼した場合
- アフィリエイターのコンテンツで自社商品・サービスが紹介されている場合
つまり、表示内容の決定に事業者が関与したかどうかがポイントとなります。
ステルスマーケティング規制の対処方法
ステルスマーケティング規制の対処方法は、事業者の表示であると明記することです。具体的には、「広告」「PR」「プロモーション」「A社から商品の提供を受けています」などの文言を目立つ部分に表記します。
このような対策により、消費者が誤認するのを防げるはずです。
ただし文字が小さかったり、見えにくい場所に掲載したりすると、事業者の表示が明確になっていないと認定される可能性もあるので表示方法に注意しましょう。
詳しくは下記リンク先の「景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック」をご覧下さい。
令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。
ステルスマーケティング規制の運用状況を注視しよう
ステルスマーケティング規制に抵触すると、企業名の公表により消費者からの信頼を失うリスクがあります。対象媒体・コンテンツを持つ事業者は、「広告」や「PR」を追記するなどの対策を実施しましょう。
またステルスマーケティング規制は10月1日に施行されたばかりです。そのため、実際にどのようなケースが措置命令の対象となるのか、運用状況を注視する必要があります。