タイパ消費とは、時間を効率良く使えるかどうかを判断基準にした消費行動です。1990年代~2010年代生まれのZ世代にみられる消費行動として注目を集めています。
若者のトレンドのため、これからのビジネスを考えるうえでも、重要なキーワードとなるでしょう。本記事ではタイパ消費が重視される背景や具体例、事例を紹介します。
タイパ消費とは
そもそもタイパとは、タイムパフォーマンスのことで、何らかの行動に対して費やした時間と得られた効果・結果から考えられる「時間対効果」のことです。
そのためタイパ消費とは、時間効率を優先した消費行動のことです。例えば、映画を2倍速で視聴したり、食材宅配を利用したりすることが挙げられます。
コスパとの違い
コスパとはコストパフォーマンスの略で、日本語で「費用対効果」の意味です。費用に対して、得られる効果をあらわす指標で、ビジネス用語としてよく利用されます。コスパが費用を重視する考え方に対して、タイパは時間を重視する考え方です。
タイパが重視される背景
タイパ消費は、Z世代と呼ばれる1990年代~2010年代生まれの若者を中心に支持されています。若者の心情を理解するために、この章ではタイパを重視する背景について紹介します。
あふれるコンテンツ
タイパが重視される背景は、Web上には消費しきれないほどのコンテンツがあふれているためです。
動画ストリーミングサービスとして人気のYouTubeでは、2012年に毎分アップロードされる動画が60時間分に達しています。つまり、1分で2.5日分の動画がアップロードされるため、1人の人間がすべてのコンテンツを視聴するのは不可能です。
ちなみに、2017年にはYouTubeの1日の総視聴時間は10億時間(約11万年)を超えました。言い換えると、これほど膨大な時間を費やせるほどYouTubeにはコンテンツがあることを意味しています。
また動画や漫画の豊富なコンテンツ数で人気の「U-Next」では、2022年12月時点で27万本の動画と84万冊の電子書籍があります。
人の寿命を80歳と仮定すると、一生は約30,000日となるため、毎日9本の動画と28冊の電子書籍を見ないとすべてのコンテンツを消費できません。
このように、1つのサービスでもこれほど大量のコンテンツがあふれている現代社会で、情報を取得するにはタイパが重要となるのです。
急速なトレンドの変化
Z世代がタイパ消費を重視する背景には、日々、急速にトレンドが変わることが挙げられます。多くのZ世代が情報収集やコミュニケーションツールとして利用しているSNSでは、日々新たなトレンドが発信され続けているためです。
日々変わるトレンドを友人や親しい人と共有・共感するには、新たなトレンドをいち早くキャッチして体験する必要があります。そのため、Z世代では自分に必要な情報を素早く収集できるようにタイパが重視されるのです。
価値観の変化
タイパ消費が重視される理由は、社会の価値観の変化が挙げられます。
例えば、従来の価値観では長時間残業をしているかで評価される時代もありました。しかし、現在ではコスト削減のためにも、決められた時間内で多くの成果を上げることが評価されるでしょう。そのため、仕事では時間を意識したタイパ重視の立ち回りが必要となっています。
またZ世代は「自分らしさ」を重視する傾向が強いのも特徴です。プライベートも大切と考えているため、趣味や恋愛、好きなタレントなどを応援する推し活、勉強などに時間を費やしています。
すると仕事とプライベートでやるべきことが増えてしまい、時間が足りずにタイパ消費を重視せざるを得ないという実情もあるようです。
タイパ消費の具体例
具体的にタイパ消費とは「どのようなものなのか知りたい」という方もいるでしょう。この章では、タイパ消費の代表例を3つ紹介します。
- 動画コンテンツの視聴方法
- 食材宅配による料理時間の短縮
- オンライン授業やWeb面接
動画コンテンツの視聴方法
動画コンテンツのタイパ消費として、「ながら視聴」「2倍速視聴」「ネタバレ視聴」「スキップ視聴」といった視聴方法があります。
・ながら視聴
ながら視聴とは、動画をみながら料理をするといったように、同時に2つ以上のタスクをこなして時間効率を高める方法です。
・2倍速視聴
動画の再生速度を2倍速にして視聴する方法です。視聴に必要な時間が半分で済むため、タイパ消費の代表例といえます。
・ネタバレ視聴
ネタバレ視聴とは、まとめたダイジェストやまとめサイトなどで、事前に動画の内容を確認してから視聴する方法です。あらすじを押さえたうえで視聴するため、ネタバレ視聴と呼ばれます。
・スキップ視聴
動画コンテンツの面白い部分、興味のある部分だけを視聴して、その他はスキップして時間を短縮する視聴方法です。
食材宅配による料理時間の短縮
料理に対してもタイパが重視される傾向にあります。具体的には、買い物の時間を削減・食材の下ごしらえの時間短縮ができる食材宅配です。食材宅配はミールキットと呼ばれ、ミールキットの市場規模はタイパ消費の高まりから右肩上がりに増えており、2024年には1,900億円規模に拡大すると予想されています。
オンライン授業やWeb面接
オンライン授業やWeb面接はタイパを重視するZ世代から好まれる傾向にあります。とくにコロナ禍を学生として過ごした世代は、オンライン授業などによりWeb会議ツールの利用に抵抗感がないため、移動時間・交通費を削減できるWeb面接を好むのです。
タイパ消費を意識した商品・サービス事例
この章ではタイパ消費を意識した商品・サービスを展開している3社の事例を紹介します。
- キッコーマン
- フライヤー
- Oisix
キッコーマン
引用:キッコーマン
キッコーマンは調味料や加工食品の企業で、醤油のメーカーとイメージされる方も多いでしょう。
キッコーマンが提供しているタイパ消費を意識した商品が「うちのごはん」シリーズです。コンセプトは「5分~10分でフライパンを使って作る料理」で、おいしさに加えて、時間を短縮できることをアピールすることで認知度や売上拡大を実現しています。
キッコーマンは「うちのごはん」シリーズなどの投入により、大きな成功を収めており2023年の売上収益が6,000億円を突破し、右肩上がりの成長を続けています。
フライヤー
フライヤーは、本の要約サイトflier(フライヤー)を提供している企業です。
flierは本1冊を約10分で読めるように、要約を配信しているサービスで、通勤時間やスキマ時間にビジネス書などを読めると人気があります。通常であれば、1冊あたり4~6時間かかるビジネス書を10分で読めるのは、タイパ消費を意識したサービスといえるでしょう。
先に紹介した「ネタバレ視聴」のように、内容を確認してから本を購入したい方にもメリットのあるサービスです。
Oisix
OisixはミールキットのEC通販を行っている企業です。累計出荷食数が1.5億食を突破するほど、多くのユーザーに利用されています。
Oisixのミールキットの特徴は、以下のとおりです。
- 主菜と副菜の2品分の食材が届く
- 2品を20分で完成できる
- 人気シェフや料理研究家のレシピが楽しめる
- 5種類以上の野菜が入っており栄養バランスに優れている
注文すれば自宅に食材とレシピが届き、食材を購入する時間や手間を省けるため、タイパ消費を意識したサービスといえます。
また時間短縮につながるだけではなく、簡単においしい料理が楽しめるのも人気の秘訣です。
新規事業のアイデアにタイパの視点を取り入れよう
タイパ消費はZ世代を中心にみられる消費行動ですが、ほかの世代にとってもメリットがあります。そのため、紹介した3つの事例のように、若者だけではなく多くのユーザーを囲い込むことに成功しているのです。
新規事業のアイデアに悩んでいるのであれば、タイパ消費を意識した商品やサービスを検討してみてはいかがでしょうか。「時間」に焦点を当てることで、これまでにはなかったアイデアが出てくるかもしれません。