製鋼のカギは「ウェルビーイング(幸福)」にあり!意味と企業に取り入れるメリット

「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念のことです。近年、時代によって価値観が大きく変わっていくことで、「ウェルビーイング」に対する注目が高まっています。 本稿では、社会がウェルビーイングに注目する理由と取り入れるメリットについてご紹介します。

ウェルビーイングとは 

「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念のことです。語源は16世紀のイタリア語「benessere(ベネッセレ)」。「よく在る」 「よく生きる」ことを意味する概念のことといわれており、現在では「幸福」と翻訳されることも多い言葉です。

ウェルビーイングに関する調査として有名なものの一つが、ギャラップ社(アメリカ)の調査です。140を超える国や地域で行われる幸福度についての大規模な調査で、その調査軸は「体験」と「評価」の二つからなります。 

体験は、五つのポジティブ体験(よく眠れた/敬意を持って接された/笑った/学び、興味/歓び)と、五つのネガティブ体験(体の痛み/心配/悲しい/ストレス/怒り)をしたかどうかとなっています。 

評価は、自分の人生に対する自己評価を10段階で聞くものです。 

軸を体験と評価の二つに分けている理由は、人間が直近の体験の影響を受けやすいためです。なるべく印象のバイアスを取り除くため、体験と評価を聞くようにしています。 

また、同調査は世界幸福度ランキングでも活用されています。世界幸福度ランキングは、国連の持続的な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が発表する調査です。 

この調査ではギャラップ社のデータのうち「評価」の項目を指標として使っています。国際幸福デーである2020年3月20日に発表された調査では、1位がフィンランド。日本は62位となっており、決して高い順位とはいえません。2019年の調査では58位であり、4ランク後退したことになります。

ウェルビーイングに注目の理由 

国連の諸機関や日本の官公庁も取り上げるほど、ウェルビーイングに注目が集まっています。

価値観の多様化 

ダイバーシティという言葉に代表されるように、価値観は加速度的に多様化しています。性別や国籍、文化など、さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まり、ともに仕事をするようになりました。こうしたことから、企業経営においては、従業員の多様性を尊重することの重要性が高まっています。多様性を尊重することでさまざまなビジネスアイデアが生まれたり、コミュニケーションが活発になったりする側面が大いにあるからです。

企業が従業員の多様性を受け入れ、異なる価値観やバックグラウンドを持つ人材がその能力をフルに発揮するための環境を整備することは、従業員の幸福感を増し、ひいては企業の競争力を高め、イノベーションにもつながります。 

人材不足や人材の流動性の高まり 

2020年における子どもの出生数が、85万人を切る見通しとなることが報道されました。この数字は1899年以降の統計上でも、過去最少の数字となっています。国内では急速的な少子高齢化が加速し、この問題によって生まれる子供が減るため、中長期的に見て深刻な人材不足に陥ることが予測されています。 

この問題は、他国でも起こっている問題ですが、日本は特に出生率の低下が懸念されています。

老人>若者という社会図になったため、終身雇用という概念は希薄になり、そうした労働環境の変化から若者を中心に、価値観に合う組織を求め転職することが一般化しました。こうした課題から、企業において、事業に貢献する人材の確保やリテンションは大きな課題といえるでしょう。 

企業は利益だけでなく、従業員やその家族に対する幸福を追求する姿勢も、明確にする必要があります。そうすることで、企業に対する従業員の帰属意識やロイヤリティが高まり、従業員へのリテンションにつなげられます。

働き方改革の推進 

安倍内閣が推進し、2019年4月からスタートした働き方改革。 

働き方改革で改正された問題としては、残業時間の上限規制や、産業医の機能強化、同一労働・同一賃金の適用などを定めるものです。 

これによって、企業は、多様な価値観やライフスタイルを持つ従業員が働きやすい環境を整備するのを当初、目的としていました。 

また、昨今の人材採用は競争が激しくなり、マーケティング戦略を明確にすることの重要さが増しています。福利厚生の充実度やテレワーク、副業が可能であるなど、魅力的な労働環境を整備することは、優秀な人材を確保することにもつながります。企業は、どのような働き方であれば従業員の幸福度が増してやりがいを感じるのかといった観点で、制度や仕組みを検討する必要があり、最近では一部企業を除き、働き手が生まれてきました。 

また、国も法律の一部改正によって、企業や従業員など、ちょうどいいバランスを模索している段階にあるといえます。

新型コロナウイルス感染症の拡大による生活改革

2020年に起こった新型コロナウイルス感染症の拡大は、私たちの社会や仕事を大きく変えることになりました。 

家にいる機会が増え、無駄な外出、また本来必要であった生活も奪われ、自分や家族の幸福について、あらためて考えさせられた人も多いのではないでしょうか。 

職場環境でいえば急速に普及したテレワークは業務効率化につながりましたが、同時に新たな問題点やストレスも表面化しました。コミュニケーションが断絶した中での業務に、メンタルの不調を訴える従業員もいます。そのため、従業員やその家族が健康でやりがいを持って仕事をするための考え方として「ウェルビーイング」に対する注目が高まっているのです。 

SDGsでの言及 

SDGs(持続可能な開発目標)という言葉が近年よく聞かれるようになりました。SDGsとは、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す、国際的な開発目標のことで、2015年9月の国連サミットで採択されたものです。 

SDGsでは、地球温暖化の対策、環境問題を初めとする、貧困解決、教育拡充や電気、水の世界復旧など17のゴールと169のターゲットが定められています。また、この目標の一つには「GOOD HEALTH AND WELL-BEING」があり、世界中からもウェルビーイングが注目されていることがわかります。

企業に取り入れるメリット 

さまざまな調査から、自分が幸せだと感じる従業員は、創造的で業務のパフォーマンスが高く、組織に良い影響をもたらすことがわかっています。ウェルビーイングでは「心身ともに健康であること」が重要で、後述する「健康経営」とも深い関係性があります。 

社内コミュニケーションが取りやすい環境 

ウェルビーイングの実現のためには、良好な人間関係の構築が重要です。社内でコミュニケーションが取りにくい環境だと、良好な人間関係を築くのが難しくなります。特に現在はリモートワークを取り入れている企業も多いため、リモートからでもコミュニケーションを取りやすいよう、コミュニケーションツールの導入などを進めると良いでしょう。 

労働環境の改善 

従業員の健康を損ねないよう、長時間労働が発生しない労働環境の改善を行いましょう。労働時間・業務内容を可視化し、適切な労働時間・業務内容になるようマネジメントを行うことが重要です。また、従業員の価値観や環境に合わせて多様な働き方を受容すること、産休・育休などを取りやすい環境をつくることなども大切になります。 

業務のDX化 

業務のDX化には、単なる生産性向上だけではなく、ウェルビーイング向上につながる効果もあります。例えば、PCの操作時間の記録により個人の業務量を可視化し共有すれば、チームメンバーの助け合いによる業務負荷の平準化や時間配分の改善提案などが行われやすくなります。 

また、リモートワークなど働き方が多様な環境では、労働時間やコミュニケーション、業務状況が可視化しにくいという課題が生まれています。「NEC 働き方見える化サービス Plus」のようなサービスを利用すれば、上記の課題解決ができ、ウェルビーイング向上につながるでしょう。

まとめ

価値観が多様化する昨今では、「満たされている状態」の条件や基準はさまざまです。時代によって価値観は大きく変わっていくものであるため、ウェルビーイングの定義もまた変わっていくものといえるでしょう。 

ウェルビーイング向上には、時代ごとの価値観に柔軟に適応し、固定観念を持たずに取り組むことが重要です。また、満たされている状態の条件や基準はさまざまであり、取り組みを数値化しなければなかなか成果を実感できないという点も注意が必要でしょう。PERMAやギャラップ社の要素などをもとに、取り組みを数値化して効果測定ができるようにすることをおすすめします。 

この記事を書いた人

cd2@provej.jp