インサイトはマーケティング関連のビジネス用語で使われる言葉です。よく使われる一方で、今さら意味を聞けないというビジネスパーソンもいるのではないでしょうか。本記事ではそのようなビジネスパーソンに向けて、インサイトの意味やニーズとの違い、メリット・デメリット、事例を紹介します。
ビジネス用語のインサイトとは?
インサイト(insight)とは、英語で「本質を見抜く力・洞察力・直感」のことです。ビジネス用語として使われる場合は、消費者の行動や意識などを洞察し得られた消費行動の動機を意味します。
ビジネスで使われる場合は、顧客インサイトや消費者インサイトと呼ぶこともあります。
インサイトとニーズとの違い
インサイトと似た言葉にニーズがあります。ニーズは「欲求」や「需要」を指す言葉です。
ニーズは顕在ニーズと潜在ニーズに分けられ、とくに潜在ニーズとインサイトが似ていると思うかもしれません。
潜在ニーズは消費者が気づいていない欲求のことです。インサイトはさらにその奥にある消費者の気づいていない欲求の「動機」や「本音」のことです。
つまり、インサイトとニーズは意味が異なるので使い分ける必要があります。
インサイトが注目される背景
近年、従来の顧客のニーズから商品を開発する手法では成果をあげるのが難しくなっています。そこで注目されているのがインサイトです。ここではインサイトが注目される2つの背景を紹介します。
競合他社との差別化
インサイトが注目される背景は、競合他社との差別化に役立つためです。
従来は、顧客の顕在ニーズ・潜在ニーズから商品を開発する手法が一般的でした。しかし、同様の手法を多くの企業が採用しているため、市場に似たような商品が溢れています。
同じような商品が溢れるなか、自社商品の売上を伸ばすのは困難です。つまり、従来の手法では競合他社との差別化が難しくなり、価格競争に陥りやすくなっています。
そこでインサイトにアプローチした商品を開発することで、競合他社との差別化ができるとして注目されているのです。
ライフスタイルの多様化
消費者のライフスタイルは多様化しています。それに伴い商品・サービスに求める価値も変化しています。例えば、モノ消費からコト消費、イミ消費といった具合です。
モノ消費:物の価値を重視する消費行動
コト消費:体験や経験を重視する消費行動
イミ消費:社会や環境への貢献を重視する消費行動
このようなライフスタイルの多様化により、需要の変化のスピードも速く、顕在ニーズ・潜在ニーズを追いかけても消費者の心を捉えるのが難しくなっています。
そのため、消費者自身も気づいていないインサイトに訴求することで、消費者の心を捉え、自社のファンやリピーターの獲得につながると期待されています。
マーケティングでインサイトを使うメリット
マーケティングにインサイトを使うと、3つのメリットがあります。
- イノベーションを促進できる
1つ目のメリットは、企業のイノベーションを促進できることです。インサイトはこれまでの顧客のニーズをもとにしたアプローチ方法と異なります。新たな手法を取り入れることで、企業のイノベーションの促進につながるのです。
- 顧客との関係性を強化できる
インサイトをもとに商品を開発すると、顧客は「こんな商品が欲しかった」と感じることでしょう。消費者が気づいていない欲求を満たすことで、消費者のことをわかっていると感じてもらえるはずです。このような関係性の強化は、ファンやリピーターの獲得にもつながります。
- シェアを拡大できる
3つ目のメリットは、自社商品・サービスのシェアを拡大できることです。インサイトに訴求することで、新たな価値を持つ商品を生み出しやすくなります。これまでにない商品は、競合他社のいない市場のため、シェアをいち早く獲得できるでしょう。
インサイトのデメリット
インサイトにはメリットばかりではなく、デメリットもあるので注意が必要です。具体的にはマーケティング手法として確立していない点です。もしも間違った手法をとってしまうと、効果を得るのは難しいでしょう。ときにはインサイトの分析を間違えてしまうかもしれません。自社に適したマーケティング手法として確立するには、手探りの状態で試行錯誤を繰り返す必要があります。
インサイトの見つけ方
インサイトの見つけ方には、以下の3つの手順があります。
- データ収集
- データ分析
- 共感マップの作成
インサイトをマーケティングに活用するために、各手順を把握しましょう。
データ収集
まずは顧客のインサイトを見つけるために、データ収集を行います。データ収集の具体的な手法は以下のとおりです。
- アンケート調査
街頭でアンケートを実施し、定量的・定性的なデータを収集する方法
- 行動観察調査
消費者がどのように行動するのかを、実際に観察して調査する手法
これらの調査方法により得られた定量的データ・定性的データを組み合わせることで、顧客の嗜好や行動の傾向を探ることができます。
データ分析
次に、データ収集で得たデータを分析します。分析は情報量が多いことから、データ分析ツールの活用が有効です。
例えば、Webサイトの情報を分析するアクセス解析ツール、大量のテキストデータを分析するのに便利なテキストマイニングツールなどがあります。
このような分析ツールを使うことで、より深い洞察が可能になります。
共感マップの作成
収集・分析したデータを可視化するには、共感マップの作成が有効です。
共感マップとは、消費者の行動や感情などの6つの要素を書き出すことで、消費者のニーズを視覚化できるフレームワークです。
- 共感マップの6つの要素
- 考えていること
- 見ていること
- 言っていること
- 聞いていること
- 悩みやストレスに感じること
- 幸福に感じること
共感マップを作成することで、ユーザー視点からインサイトを検討できます。共感マップは、プロジェクトチーム内でインサイトを共有しやすいのもメリットです。
インサイトの使い方の事例:トップ スーパーNANOX
出典:NANOX one
インサイトを活用した成功事例として、ライオンのトップ スーパーNANOXを紹介します。ライオンのトップ スーパーNANOXは、匂い・汚れを1本で落とせる衣類専用の液体洗剤です。
従来の液体洗剤は、衣類の汚れを落とせるかが重要なポイントでした。しかし、視認できない部分の汚れをきれいにしても、消費者にはピンとこないためどのように訴求するのかが課題でした。
そこで消費者のデータを収集・分析したところ、きれいになっているかを確認するのに「洗濯物の匂いを嗅いでいる」ということがわかります。そこでライオンは衣類の汚れだけではなく、匂いも落とせる洗濯洗剤のトップ スーパーNANOXを開発したのです。
インサイトに訴求した同商品は、大ヒットとなりました。現在は、NANOX oneとしてさらに進化を遂げています。
競合他社との差別化にはインサイトがポイント
さまざまな商品が溢れている現代において、競合他社とどのように差別化を図るかが重要になっています。従来の顕在ニーズ・潜在ニーズに訴求する方法は、多くの企業が取り入れています。そこでインサイトに注目したマーケティングを実施し、競合他社との差別化を図ってみてはいかがでしょうか。